それにつけてもM-1 2022

元芸人のたわごと

3回戦 牛ぺぺ

数年前の予選動画でネタを観てから好きになったコンビ。2人から面白い雰囲気がずっと漂っていてどんなネタするのか毎回楽しみ。

 

マッチングアプリで知り合った女性との話のネタ。限りなく純粋な会話のみで成立させている。

 

面白かった。1回目より2回、3回観た時の方が特に面白く感じた。

 

特筆すべきは、2人にははっきりとしたボケとツッコミという役割がないところ。左の人がエピソードを話し、その後に右の人がもし女性の方がこんな考えだったら、、というような会話。笑いをとる部分は2人ではなく、会話に出てくる第三者の意見の部分。だが、もしこんな女性だったらという設定を作って漫才コントをするわけではなく、あくまで2人の会話の延長で、そんな展開おかしいやろ、てことはこんなことなんちゃうかと話の中に出てくる第三者ナチュラルにボケさせている。

そこには2人の思想は介入せず、ただ単純にその第三者がこんなことを言う面白い奴という、悪い言い方をすれば自分たちの手を汚さず遠隔操作でボケている感じ。だから話自体が自然だし、その中で繰り出される「今までで1番面白かった番組がvs嵐」「動物のハプニング映像で爆笑する」とかのボケが嫌味なく入ってきて素直に面白いと感じる。あくまで第三者の意見ですという体が抜群に効果を発揮している。観客が2人と同じ立場で話を聞けるのでネタの面白い部分にスムーズに入っていきやすい。

 

これはそれを笑いとして昇華させられる2人のリアクションや想像する様がバカバカしいから成立している。ネタの構造的に後半部分は自虐になっているから観ている方は思わず笑ってしまう。押し付けられている笑いではなくみんなで共有する笑い。

 

彼らは1回戦の動画でも第三者がこんなことを言っていて人生2回目に見える、というところで笑いをとっていた。この2人は自分たちの面白いと思うことをストレートに自分達で表現しない。2004年のポイズンガールバンドに対する大竹まことの「2人の存在を消そうとすればするほど2人の存在が浮き上がってくる」というコメントがぴったりと当てはまるような気がする。

 

芸人として、これで笑わせる、俺はこんな面白いことを思いつく、というエゴや承認欲求みたいなものを限りなく削ぎ落とし、純粋な立ち話という原始的でありながらもはや新しいスタイルを確立しているように思う。

 

とても狡猾なやり方で頭のキレるスタイル。個人的にとても好きだ。追加合格を願う。

 

やっぱお笑い楽しいな