それにつけてもM-1 2022

元芸人のたわごと

3回戦 ツートライブ

面白い。自分がやっていることが格好いいと思い込んでイキっているやつとそいつの話をダルそうに聞くという2人の会話の漫才。この人たちはずっとこの体でネタを作ってやり続けていると思う。数年前のM-1の予選のネタがめちゃくちゃ面白かったのを今でも覚えている。確かことあるごとにある単語や行動をイキッた名称に変えて話していくみたいなネタだった。

 

最初のツッコミの「何してんねんお前」に対してボケの方も嬉しそうに「何してん俺〜」と食い気味に返すところからもう面白い。自分のしでかした愚かなこともカッコいいことと捉えて話すスタンスが完全に痛いやつだしそれが分かりやすい。恐らくこのスタイルを貫くのに彼の見た目がかなりいい印象を与えていると思う。まさに痛さが分かりやすい見た目。うってつけの顔と髪型。ちょっと巻き舌入っている喋り方。声色。いちいち鍋を「男の料理、鍋」というところなど細部にまでイキリが際立っていて面白い。ここはツッコミがないのもいい。

 

そしてツッコミの人のちょうどいい相槌と話の聞き方。この人相当うまい。漫才師としての立ち居振る舞いが洗練されている。洗練され過ぎていてもはやそれで面白いまである。洗練され過ぎてもはやうるさい反応している時もある。でもうまい。特に正面を向いていてボケを聞いた後の振り向き方。グインと首を相方の方に瞬時に向けて、あたかも本当に今聞いて驚いているかのようにつっこむ。首を曲げるスピード感。リアル過ぎてすごい。この達者さにもう笑ってしまう。感情の乗せ方もうまく、何チェアンド何ニーナなん?の超バカバカしいボケに対しては、もう笑いながら「ドルチェアンド・・!」とこいつバカすぎるだろの反応を見せながらつっこむ。さらにすごいのが、その後にちょっと間を開けて「ドルチェアンドガッバーナ、ほんでスーツで、、」のツッコミ。ドルチェアンドガッバーナを語尾にいくにつれ弱くしていってパッと切り替えて声量を上げてほんでスーツで行ったん?!と繋げる。この技術には惚れ惚れする。体にツッコミとしての話し方が馴染みきっている人のそれである。ちょいちょい「炎上の話だけして」と釘を刺すのもボケの人のイキリのくどさを強調しているし、話を本筋に戻す効果も効いている。

過剰に例えツッコミをしなくても、ボケも入った変則ツッコミをしなくても、純粋に話をちゃんと聞いているだけでここまで面白くボケを引き立て、笑いを増幅させることができるのだ。これこそがツッコミだ。ツッコミはこれでいいのだ。

 

この3分間のクオリティと同じクオリティの4分ネタがあるのならば決勝に行ってもおかしくないと思う。

 

やっぱお笑い楽しいな