それにつけてもM-1 2022

元芸人のたわごと

3回戦 ラランド

マチュアで準決勝進出。単純に凄い。学生芸人出身らしく舞台の経験はたくさんあるらしいがそれでも凄い。本人たちはきっと、見たか!どや!という気持ちでいっぱいだろう。正直この勢いなら決勝行くんじゃないかと思う。

 

 

ネタは漫才コント。女の子が男の人に対してキャバクラで練習しろと言って自分がキャバ嬢やってボケていく。まぁベタっちゃベタ。ただしかし、ボケの演技がキレキレ。ツッコミもアマチュアとは思えない声の出し方と声量。もともとポテンシャルがすごい高い。だからめちゃくちゃウケてる。

 

 

そんなに面白くなかった。多分嫉妬とバイアスかかってる感情でどうしても観てしまうというのもある。アマチュアで3回戦突破?どんなもんじゃいという気持ちが0だったわけではない。でも2016年の晴天サンティのときは単純にとても面白かった。混じりっけのない感情で笑った。納得の通過だと思った。

 

 

ネタを言うと個人的に好きではない部分がいくつかある。まず女の子の方が「いやお前はさ、」と話すところ。女の子がお前っていう違和感。いや、いる。友達にお前っていう女の子はいる。でもこれは違くてなんだろう、漫才であることに捉われた「お前」な感じがしてしまう。自分も学生芸人の世界をほんの少しかじった身なので感じるのだが学生芸人とかはじめたてのアマチュアって漫才師然とするために形骸化した「お前」を使いがちな印象がある。それがとにかく気持ち悪い。あぁまたこの感じか。と思ってしまう。そこからはじまる彼女の達者な動きや喋りも反復練習の賜物にしか感じられない。ああ、学生芸人だなあと思う。

 

 

あとは「キャバ嬢がブリッジ挟むな」のツッコミ。ウケる。これは絶対ウケる。特にお笑い大好きなM-1ファンが観客なら間違いない。だからこそつまらない。芸人やお笑いのルールを持ち出してツッコミを入れている。いわゆるメタ。メタはある程度ちゃんとウケる。5ちゃんで誰かが言っていたのが分かりやすいと思ったのだが、「同じカテゴリーに属する者同士の共通意識を確認し合う笑い」だから1番共感を得られる。私はメタネタは相当作り上げられてないと面白くない。自分でもやったことはあるが安易にウケてしまう。だからメタに頼るメタ中毒になる。ついつい思いついてしまう。

しかし時にそれは内輪ウケにとどまってしまう。もともと人を笑わせることを目的としているお笑い芸人のネタの中でお笑いファンやお笑いに詳しい人だけの内輪ウケほど寂しいものはない。他の分野の人がその人らにしか分からない話で盛り上がるのはいいがお笑いは笑わせることをもともと目的としているからなぁ。

 

そしてふとあれ?と思うことがある。「キャバ嬢がブリッジ挟むな」というのは、キャバ嬢が芸人みたいなことするな、キャバ嬢が芸人みたいに凝ったことして面白いことしようとするなというニュアンスが含まれていると思う。その時思う。あれ?あなたたちは?確かに芸人として話を進めているから芸人みたいに凝った真似をするボケを貶めて、もしくは芸人の方を少しバカにする自虐での感じで成立はしている。

でもこの2人はアマチュアとして出場している。アマチュアとして出てるならば、あなたたちも芸人みたいな真似事をして観客から笑いをとっているよねという気持ちになる。どの立場からそのツッコミができるのか?は言い過ぎだけどこのツッコミで笑いをとる違和感が拭い切れない。もしかしてそのことも俯瞰に見てて、自分たちを完全にピエロとしてかましているボケだとしたらお見それしましたしか言えないけど。ただ女の子の方のnoteを見たがそこまで自分を道化にして笑いをとることができる人なのかと言ったらそうではないように思った。それともブリッジという芸人用語がもう十分に市民権を得たのか?

マチュアの勝ち抜きということで注目されているしなんだかこれずるいなぁという感想。このボケがなかったらここまで思わなかった。このボケで笑う者は「アマチュアなのにすごい」を言ってはいけない、そんな気がする。アマチュアとしてすごいなら変ホ長調の方がすごいと思った。ネタの内容的に。この人らもアマチュアと言っていいか分からんけど。

 

しかし勝ち残っている事実は単純にすごいとしか言えない。言わなくてはいけない。プロを打ち負かしてここまで残って決勝にも行くかも。

 

この2人には学生芸人が持つ、自分を信じてやまない向こう見ずな若さと尖りがついにはプロを打ち負かす時代になったということを教えてもらった。

 

 

やっぱお笑いやりたいな